〔『正法眼蔵』原文〕
かなしむべし、はづべし、仏祖行持の功徳分より生成ショウジョウせる形骸を、
いたづらなる妻子のつぶねとなし、妻子のもちあそびにまかせて、
破落ハラクをおしまざらんことは。
邪狂にして身命を名利ミョウリの羅刹ラセツにまかす。
名利は一頭の大賊なり。名利をおもくせば、名利をあはれむべし。
名利をあはれむといふは、仏祖となりぬべき身命を、
名利にまかせてやぶらしめざるなり。
妻子親族あはれまんことも、またかくのごとくすべし。
名利は夢幻空花ムゲンクウゲなりと学することなかれ、衆生のごとく学すべし。
名利をあはれまず、罪報をつもらしむることなかれ。
参学の正眼ショウゲン、あまねく諸法をみんこと、かくのごとくなるべし。
〔『正法眼蔵』私訳〕
悲しむべきである、恥ずべきである、
仏祖の行持の功徳から生れてきたこの身を、むなしく妻子の下僕とし、
妻子の弄びに任せて、落ちぶれることを惜しまないとは。(かなしむべし、はづべし、仏祖行持の功徳分より生成せる形骸を、いたづらなる妻子のつぶねとなし、
妻子のもちあそびにまかせて、破落ををしまざらんことは。)
誤って身命を名聞利養の悪鬼に任す、名聞利養は一人の大賊である。
(邪狂にして身命を名利の羅刹にまかす、名利は一頭の大賊なり。)
名聞利養を大切にするならば、真の名聞利養を大切にすべきである。
(名利をおもくせば、名利をあはれむべし。)
真の名聞利養を大切にするとは、仏祖となることができる身命を、
名聞利養に任せて壊させないことである。
(名利をあはれむといふは、仏祖となりぬべき身命を、名利にまかせてやぶらしめざるなり。)
妻子や親族を大切にすることも、またこのようにすべきである。
(妻子親族あはれまんことも、またかくのごとくすべし。)
名聞利養は夢や幻や眼病のせいで見える錯覚と思ってはいけない、
衆生と同じように名聞利養を大切に思わなければいけない。
(名利は夢幻空花と学することなかれ、考え衆生のごとく学すべし。)
名聞利養を大切にせず、罪の報いを積もらせることがあってはならない。 (名利をあはれまず、罪報をつもらしむることなかれ。)
仏法を修行する者の正しい眼が、一切のものを見ることは、
このようでなくてはならない。
(参学の正眼、あまねく諸法をみんこと、かくのごとくなるべし。)
仏祖となることができる身命を、名聞利養に任せて壊させてはならない『第十六行持下』16下-9-5b
合掌
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