〔『正法眼蔵』原文〕 西天竺国には、髑髏をうり髑髏をかふ婆羅門の法、ひさしく風聞 フウモン せり。 これ聞法の人の髑髏形骸の功徳おほきことを尊重するなり。 いま道のために身命をすてざれば、聞法の功徳いたらず。 身命をかへりみず聞法するがごときは、その聞法成熟 ジョウジュク するなり。 この髑髏は、尊重すべきなり。 いまわれら、道のためにすてざらん髑髏は、他日にさらされて野外 ヤゲ にすてらるとも、たれかこれを礼拝せん、たれかこれを売買せん。 今日の精魂 ショウコン 、かへりてうらむべし。鬼の先骨をうつありき、 天の先骨を礼 ライ せしあり。 いたづらに塵土に化するときをおもひやれば、 いまの愛惜 アイジャク なし、のちのあはれみあり。 もよおさるゝところは、みん人のなみだのごとくなるべし。 いたづらに塵土に化して人にいとはれん髑髏をもて、 よくさいはひに仏正法を行持すべし。 〔『正法眼蔵』私訳〕 西インド国には、髑髏を売り買いする婆羅門の法があると、 久しく伝え聞いている。 (西天竺国には、髑髏をうり髑髏をかふ婆羅門の法、ひさしく風聞せり。) これは法を聞いた人の髑髏の功徳が大きいことを尊重するからである。 (これ聞法の人の髑髏形骸の功徳おほきことを尊重するなり。) 今、仏道のために身命を捨てなければ、聞法の功徳はやって来ない。 (いま道のために身命をすてざれば、聞法の功徳いたらず。) 身命を顧みずに聞法すれば、その聞法は成熟するのである。 (身命をかえりみず聞法するがごときは、その聞法成熟するなり。) この人の髑髏は尊重すべきである。 (この髑髏は、尊重すべきなり。) 今我々の、仏道のために身命を捨てなかった髑髏は、 いつの日か晒されて野外に捨てられても、誰がこれを礼拝するであろうか、 誰がこれを売り買いするであろうか。 (いまわれら、道のためにすてざらん髑髏は、他日にさらされて野外にすてらるとも、 だれかこれを礼拝せん、だれかこれを売買せん。) 今日のたましいが聞法しなかったことを、 振り返って恨むことに...
〔『正法眼蔵』原文〕 いまの見仏聞法は、仏祖面々の行持よりきたれる慈恩なり。 仏祖もし単伝せずは、いかにしてか今日にいたらん。 一句の恩なほ報謝すべし、一法の恩なほ報謝すべし。 いはんや正法眼蔵無上大法の大恩、これを報謝せざらんや。 一日に無量恒河沙 ゴウガシャ の身命すてんこと、ねがふべし。 法のためにすてんかばねは、世々 セゼ のわれら、かへりて礼拝供養すべし。 諸天龍神ともに恭敬尊重 クギョウソンヂュウ し、守護讃歎するところなり、 道理それ必然なるがゆゑに。 〔『正法眼蔵』私訳〕 今、仏に見 マミ えて法を聞くことが出来るのは、 仏祖方の行持により持たされた慈恩である。 (いまの見仏聞法は、仏祖面々の行持よりきたれる慈恩なり。) 仏祖がもし法をそっくりそのまま伝えてこなければ、 どうして今日まで伝わったであろうか。 (仏祖もし単伝せずはいかにしてか今日にいたらん。) 仏祖が伝えた一句の恩にも報謝すべきであり、 一法の恩にも報謝すべきである。 (一句の恩なほ報謝すべし、一法の恩なほ報謝すべし。) 〔礼拝の仕方、合掌の仕方、お袈裟の掛け方にしても、 みな一法一法だ。〕 まして正法眼蔵無上の大法である坐禅を伝えた大恩を、 どうして報恩感謝せずにおれようか。 (いはんや正法眼蔵無上大法の大恩、これを報謝せざらんや。) 報恩感謝のために、 一日に無数の身命を捨てることを、願うべきである。 (一日に無量恒河沙の身命すてんこと、ねがふべし。) 法のために捨てた屍 シカバネ は、 後世の我々が、振り返って礼拝し供養するであろう。 (法のためにすてんかばねは、世々のわれら、かへりて礼拝供養すべし。) 諸天や龍神たちも共にそれを敬い尊重し、 守護し讃嘆するところである、必然の道理であるからである。 (諸天龍神ともに恭敬尊重し、守護讃歎するところなり、道理それ必然なるがゆゑに。) 合掌 ランキングに参加中です。よろしけれ...