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かえって迷うことに親しみきった大悟がある 『第十大悟』10-3-3a

 『正法眼蔵』原文

しばらく功夫クフウすべし、大悟底人ダイゴテイジンの却迷キャクメイは、

不悟底人と一等なるべしや。


大悟底人却迷の時節は、大悟を拈来ネンライして迷を造作するか。


他那裏タナリより迷を拈来して、大悟を蓋覆ガイフして却迷するか。


また大悟底人は一人にして大悟をやぶらずといへども、さらに却迷を参ずるか。


また大悟底人の却迷といふは、

さらに一枚の大悟を拈来するを却迷とするかと、かたがた参究すべきなり。


また大悟也一隻手イッセキシュなり、却迷也一隻手なるか。


いかやうにても、大悟底人の却迷ありと聴取するを参来の究徹なりとしるべし。


却迷を親曾シンゾウならしむる大悟ありとしるべきなり。



〔『正法眼蔵』私訳〕

しばらく力を尽くすべきである。大悟に徹した人がかえって迷うのは、

不悟(悟にもとらわれないこと)に徹した人と同じであろうか。

(しばらく功夫すべし、大悟底人の却迷は、不悟底人と一等なるべしや。)


大悟に徹した人がかえって迷う時は、大悟を持って来て迷いを造るのか。

(大悟底人却迷の時節は、大悟を拈来して迷を造作するか。)


どこかほかの所から迷いを持って来て、大悟を覆い隠してかえって迷うのか。

(他那裏より迷を拈来して、大悟を蓋覆して却迷するか。)


また、大悟に徹した人はそのまま大悟に徹した人であり、

大悟を破らないけれども、さらにかえって迷うことを修行するのか。

(また、大悟底人は一人にして、大悟をやぶらずといへども、さらに却迷を参ずるか。)


また、大悟に徹した人がかえって迷うというのは、さらにもう一つ大悟を持って来ることをかえって迷うと言うのかと、様々に参究すべきである

(また大悟底人の却迷といふは、さらに一枚の大悟を拈来するを却迷とするかと、かたがた参究すべきなり。)


また、大悟も片方の手であり、かえって迷うことも片方の手であるか。

(また大悟也一隻手なり、却迷也一隻手なるか。)

〔これは、大悟と却迷は勝劣なく同じだということを言うのである。〕


どのようであっても、「大悟に徹した人がかえって迷うことがある」と、

〔聴こえる通り〕聴き取ることが参禅弁道の究極であると知らなければならない。

(いかやうにても、大悟底人の却迷ありと聴取するを参来の究徹なりとしるべし。)


かえって迷うことに親しみきった大悟がある、と知らなければならないのである。

(却迷を親曾ならしむる大悟ありとしるべきなり。)






                         合掌



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