〔『正法眼蔵』原文〕
時脇尊者、聞諸譏議、因謝時人、而自誓曰、
「我若不通三蔵理、不断三界欲、不得六神通、
不具八解脱、終不以脇而至於席」。
《時に脇尊者、諸々の譏議を聞いて、
因みに時の人に謝して、而シカも自ら誓って曰く、
「我若モし、三蔵サンゾウの理を通ぜず、三界の欲を断ぜず、
六神通ロクジンツウを得ず、八解脱ハチゲダツを具せずば、終に脇を以て席に至ツけじ」。》
自爾之後、唯日不足、経行宴坐、住立思惟。
昼則研習理教、夜乃静慮凝神。
綿歴三歳、学通三蔵、断三界欲、得三明智。
時人敬仰、因号脇尊者。
《爾ソレより後、唯コれ日も足らず、
経行キンヒン宴坐エンザし、住立ジュウリュウ思惟シユイす。
昼は則スナワち理教を研習し、
夜は乃スナワち静慮ジョウリョ凝神ギョウシンす。
三歳を綿歴メンレキするに、学は三蔵を通じ、
三界の欲を断じ、三明サンミョウの智を得る。
時の人敬仰キョウゴウして、因みに脇尊者と号す。》
〔『正法眼蔵』私訳〕
その時、脇尊者は、多くの悪口を聞いて、
その連中にわびて、それでいて自らに誓って言った、
(時に脇尊者、諸の譏議を聞いて、因みに時の人に謝して、而も自ら誓って曰く、)
「わたしがもし、三蔵(経蔵・律蔵・論蔵)の道理に通じず、
欲・色・無色の三界の欲を断たず、神通力を得ず、
八解脱を具えなければ、決して脇を寝床につけまい」と。
(「我若し、三蔵の理を通ぜず、三界の欲を断ぜず、六神通を得ず、
八解脱を具せずは、終に脇を以て席に至けじ。」)
それから後は、ひたすら日を惜しんで、
坐禅し経行キンヒン(ゆっくり歩くこと)し、立って三蔵の道理を考えた。
(爾より後、唯日も足らず、経行宴坐し、住立思惟す。)昼は三蔵の道理を学習し、夜は坐禅に精進したのである。
(昼は則理教を研習し、夜は乃ち静慮を凝神す。)
これを三年間絶え間なく続けたので、学は三蔵に通じ、
三界の欲を断ち、仏の智慧(宿命・天限・漏尽の智)を得た。
(三歳を綿歴するに、学は三蔵を通じ、三界の欲を断じ、三明の智を得る。)
当時の人たちは、尊者を敬い仰いで、
脇尊者(脇を寝床につけない尊い者)と名付けた。
(時の人敬仰して、因みに脇尊者と号す。)
合掌
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