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正8-1-1a『第八心不可得』第一段1a 原文私訳〔過去の心は不可得であり、現在の心も不可得であり、未来の心も不可得である〕

 〔『正法眼蔵』原文〕

 釈迦牟尼仏言ノタマワク

「過去心不可得カコシンフカトク、現在心不可得、未来心不可得」。 


これ仏祖の参究なり。


不可得裏フカトクリに過去現在未来の窟籠クツロウ剜来ワンライせり。


しかれども、自家ジケの窟籠をもちゐきたれり。


いはゆる自家といふは、心不可得なり。


而今ニコンの思量分別は、心不可得なり。


使得十二時の渾身、これ心不可得なり。


仏祖の入室ニッシツよりこのかた、心不可得を会取エシュす。


いまだ仏祖の入室あらざれば、

心不可得の問取モンシュなし、道著ドウヂャクなし、見聞せざるなり。


経師論師のやから、声聞縁覚のたぐひ、夢也未見在ムヤミケンザイなり。





〔『正法眼蔵』私訳〕

 釈迦牟尼仏は言う、「過去の心は不可得であり、

現在の心も不可得であり、未来の心も不可得である」。

(釈迦牟尼仏言ノタマワク、「過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得」。)


これは仏祖が参じて究めた一大事である。

(これ仏祖の参究なり。)

〔天地一切のものはみな不可得である。〕


不可得の中で過去だ現在だ未来だと

窟籠(居所)をえぐり出してきたのである。

(不可得裏フカトクリに過去現在未来の窟籠クツロウ剜来ワンライせり。)


だけれども、自己の窟籠(居所)を用いてきたのである。

(しかれども、自家ジケの窟籠をもちゐきたれり。)


今言う自己の窟籠〈居所〉とは、心不可得である。

(いはゆる自家といふは、心不可得なり。)


今ここで、思量分別するのは(ここでこうかああかと思う、その思いは)

みな心不可得なのである。

(而今ニコンの思量分別は、心不可得なり。)

〔思量の一々を取り上げてみると、みな解脱の面目である。

そこを不可得と言うのである。〕


一日二十四時間を使いこなす全身が、心不可得である。

(使得十二時の渾身、これ心不可得なり。)


仏祖の室(たった今〉に入って初めて、

心不可得を会得できるのである。

(仏祖の入室ニッシツよりこのかた、心不可得を会取エシュす。)


まだ仏祖の室(たった今)に入ることがなければ、

心不可得を問うこともなく、言うこともなく、

見聞することもないのである。

(いまだ仏祖の入室あらざれば、心不可得の問取モンシュなし、道著ドウヂャクなし、見聞せざるなり。)


経典学者・論典学者の輩や、声聞縁覚の類は、

夢にもまだ見たことがないことである。

(経師論師のやから、声聞縁覚のたぐひ、夢也未見在なり。)



                         合掌



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