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正3-11-3①『第三仏性』第十一段その3①〔一頭の牛が出て来て、モーモーと鳴く〕

 

〔『正法眼蔵』本文〕

黄檗いはく、「不敢フカン」。


この言は、宋土に、おのれにある能を問取せらるるには、能を能といはんとても、不敢といふなり。


しかあれば、不敢の道は不敢にあらず。


この道得はこの道取なること、はかるべきにあらず。


長老見処たとひ長老なりとも、長老見処たとひ黄檗なりとも、道取するには不敢なるべし。


一頭水牯牛スイコギュウ出来道吽吽ウンウンなるべし。


かくのごとく道取するは道取なり。


道取する宗旨さらに又道取なる道取、こころみて道取してみるべし。



(抄私訳)

・また、「黄檗いはく、不敢」。これは文の通りである。これも「不敢」(恐れ入ります)と言っても、私は知らないなどと言われたと理解してはならない。確かに世間でも、学問や芸術などの身につけた能力ある者も、人に能力を尋ねられたとき、「不敢物(そのようなもの)ではありません」と言うのは、普通のことである。今はただ、仏性の道理が極まるところを「不敢」と言われると心得るべきである。


・だから、「長老見処たとひ長老なりとも、長老見処たとひ黄檗なりとも、道取するには不敢なるべし」と云々。

「長老見処」が、三世諸仏・諸代祖師であろうとも、「たとひ黄檗なりとも道取には不敢なるべし」とは、「長老見処」も「黄檗」も、みな仏性であるから「不敢」と言われる道理である。これは世間で用いる「不敢」の言葉ではなく、この「不敢」の言葉は仏性であると言っているとも心得るべきである。


・また、「一頭の水牯牛出で来たりて吽々ウンウンと道うなるべし」とは、取り立てて言うほどのことではなく、ただ、「長老見処」「黄檗いはく不敢」等の言葉は、ただ牛が「吽々と」ほえるくらいのことである。


もし牛が馬のいななくように鳴き、虫のように鳴くなら違うことになるはずである。牛がモーモーとほえるほどの道理によって、ただ上に挙げる言葉等が一つである道理、即ち、仏性が仏性を唱えるという道理を表しており、それは牛が牛にほえるのと同じことであるという意味合いである。


また、「かくのごとく道取するは道取なり。道取する宗旨さらに又道取なる道取、こころみて道取してみるべし」というように、道取(言う) の言葉が多く重なっているように思われるけれども、ただ、つまり、急がずに繰り返し繰り返し十分にこの「不敢」の主旨を参学しなければならないという意である。



                         合掌


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