〔『正法眼蔵』原文〕
古先いはく、優鉢羅華火裏開ウハツラゲカリカイ。
しかあれば、優鉢羅華ウハツラゲはかならず火裏に開敷するなり。
火裏をしらんとおもはば、優鉢羅華開敷のところなり。
人見天見を執して、火裏をならはざるべからず。
疑著ギヂャクせんことは、水中に蓮花の生ぜるも疑著しつべし。
枝条に諸華あるをも疑著しつべし。
又疑著すべくは、器世間の安立アンリュウも疑著しつべし。
しかあれども疑著せず。
仏祖にあらざれば華開世界起ケカイセカイキをしらず。
華開といふは、前三々後三々なり。
この員数を具足せんために、森羅シンラをあつめていよゝかにせるなり。
〔『正法眼蔵』私訳〕
古人(同安察)は言う、「蓮華は火中に開く」。
〔古先いはく、優鉢羅華火裏開。〕
だから、蓮華は必ず火中に開くのである。
〔しかあれば、優鉢羅華はかならず火裏に開敷するなり。〕
火中のことを知ろうと思えば、それは蓮華が開く処である。
〔火裏をしらんとおもはば、優鉢羅華開敷のところなり。〕
人間界や天上界の考えにとらわれて、
火中の道理を学ばないようなことがあってはならない。
〔人見天見を執して、火裏をならはざるべからず。〕
火中に蓮華が開くのを疑うなら、水中に蓮華が生じるのも疑いそうであり、
木の枝にいろいろな華が咲くのも疑いそうである。
〔疑著せんことは、水中に蓮花の生ぜるも疑著しつべし。枝條に諸華あるをも疑著しつべし。〕
また疑うなら、この有情の世界が成り立っていることも疑いそうである。
〔又疑著すべくは、器世間の安立も疑著しつべし。〕
けれどこれを疑うことはない。
〔しかあれども疑著せず。〕
仏祖でなければ、空華(空として成立する真実のありよう)が開いて
世界が起こる事を知らないのである。
〔仏祖にあらざれば花開世界起をしらず。〕
空華が開くとは、無辺際に空華が開くということである。
〔華開といふは、前三々後三々なり。〕
この空華の員数を揃えるために、
森羅万象を集めて丈高くしているのである。
〔この員数を具足せんために、森羅をあつめていよゝかにせるなり。〕
合掌
ランキングに参加中です。よろしければクリックをお願いします。

コメント
コメントを投稿