〔『正法眼蔵』原文〕
曹山ソウザン元証大師、因チナミニ僧問トフ、承教有言、大海不宿死屍、如何是海
《承るに教に言へること有り、大海死屍ダイカイシシを宿シュクせずと。
如何なるか是れ海》。
師云、「包含万有ホウガンバンウ」。
僧云、「為什麼不宿死屍イシモフシュクシシ」
《什麼ナニと為シてか死屍を宿せざる》。
師云、「絶気者不著ゼッキシャフヂャク」。
僧曰、「既是包含万有、為什麼絶気者不著」
《既に是れ包含万有、什麼と為てか絶気の者不著なる》。
師云、「万有非其功絶気」《万有は、その功、絶気に非ず》。
〔『正法眼蔵』私訳〕
曹山元証大師に、その時僧が尋ねた、「経典の教えで、大海は屍シカバネを宿トドめないと言っていますが、その海とはいかなるものですか」。
〔曹山元証大師、因僧問、承教有言、大海不宿死屍、如何是海《承るに教に言へること有り、大海死屍を宿せずと。如何なるか是れ海》。〕
〔尋ねながら、いかなるものも仏性の大海であると、自分の見処を述べている。〕
師が答えた、「森羅万象はあるがまま仏性の大海である」。
〔師云、「包含万有」。〕
僧が尋ねた、「どうして屍を宿めないのですか」。
〔僧云、「什麼と為てか死屍を宿せざる」。〕
〔仏性の大海に屍はないから、どうやっても屍はとどまらないことを裏で言い抜いている。〕
師が答えた、「息の絶えた者(死屍)はとどめない(不宿)のだ」。〔師云、「絶気者不著」。〕
僧が尋ねた、「既に森羅万象はすべて仏性の大海だと言っているのに、どうして息の絶えた者をとどめないのですか」。
〔僧曰、「既に是れ包含万有、什麼と為てか絶気の者不著なる」。〕
〔森羅万象はすべて仏性の大海だから、どうしても絶気者つまり屍はみな大海にとどまらないと言っているのである。〕
師が答えた、「森羅万象のそれぞれのはたらきは、息が絶えてはいないのである」。
〔師云、「万有、その功、絶気に非ず」。〕
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