〔『正法眼蔵』原文〕
「玄砂曰、知、汝向黒山鬼窟裏作活計」。
しるべし、日面月面ニチメンガチメンは往古オウコよりいまだ不換なり。
日面は日面とともに共出グシュツす、
月面は月面とともに共出するゆゑに、
若六月道正是時ニャクロクガツドウショウゼジ、不可道我姓熱フカドウガショウネツ
《若し六月に正に是れ時と道イふも、我が姓ショウ熱すとは道ふべからず》なり。
〔『正法眼蔵』私訳〕
玄砂は言った、「汝は思った通り黒山鬼窟の暗がりに
頭を突っ込んで生活しておるな」。
(「玄砂曰、知、汝向黒山鬼窟裏作活計」。)〔僧が黒山鬼窟で生活しているという底意は、
僧が明珠になり切っているということである。〕
知るべきである、太陽と月は大昔から一度も入れ替わったことはない。(しるべし、日面月面ニチメンガチメンは往古オウコよりいまだ不換なり。)〔あらゆるものはみな明珠で混ざりものがないというのを、
「日面月面は不換」と言うのである。〕
日が昇るのも日の明珠、月が昇るのも月の明珠、
黒山鬼窟も黒山鬼窟の明珠であるから、
もし夏の六月に姓を問われて、我が姓は正是時と言っても、
我が姓は熱と言ってはならないのである。
(日面は日面とともに共出グシュツす、月面は月面とともに共出するゆゑに、
若六月道正是時ニャクロクガツドウショウゼジ、不可道我姓熱フカドウガショウネツ《若し六月に正に是れ時と道ふも、我が姓は熱と道ふべからず》なり。)〔「正是時」は薬山の姓であり、
薬山は六月の熱い時でも正是時、寒い時でも正是時である。
つまり薬山はいつでも明珠であることを「我が姓は正是時」と言うのである。〕
合掌
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