〔『正法眼蔵』原文〕
正当恁麼時ショウトウインモジ、あるいは虚空にかゝり、衣裏エリにかゝる、
あるいは頷下ガンカにをさめ、髻中ケンチュウにをさむる、
みな尽十方世界一顆明珠なり。
ころものうらにかゝるを樣子とせり、
おもてにかけんと道取することなかれ。
髻中頷下ケイチュウガンカにかゝれるを樣子とせり、
髻表ケイヒョウ頷表ガンヒョウに弄ロウせんと擬ギすることなかれ。
酔酒スイシュの時節にたまをあたふる親友あり、
親友にはかならずたまをあたふべし。
たまをかけらるゝ時節、かならず酔酒するなり。
〔『正法眼蔵』私訳〕
まさにこのような時、あるいは虚空に懸かり、
あるいは親友の衣の裏に懸かり、あるいは龍の頷アゴの下に収め、
あるいは輪王の髻モトドリの中に収めるのであり、
これらはみなあらゆる世界の一個の明珠なのである。
(正当恁麼時ショウトウインモジ、あるいは虚空にかかり、衣裏エリにかかる、
あるいは頷下ガンカにをさめ、髻中ケンチュウにをさむる、みな尽十方世界一顆明珠なり。)
明珠が衣の裏に懸かるのを様子としているのに、
明珠を衣の表に懸けようと言ってはならない。
(ころものうらにかゝるを樣子とせり、おもてにかけんと道取することなかれ。)
明珠が髻モトドリの中や頷アゴの下に懸かるのを様子としているのに、
明珠を髻の表や頷の表に出そうと考えてはならない。
(髻中頷下ケンチュウガンカにかかるを樣子とせり、
髻表ケヒョウ頷表ガンヒョウに弄ロウせんと擬ギすることなかれ。)

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