〔『正法眼蔵』原文〕
愛せざらんや、明珠かくのごとくの彩光きはまりなきなり。
彩々光々の片々条々は尽十方界の功徳なり。
たれかこれを攙奪ザンダツせん。行市アンシに塼カワラをなぐる人あらず、
六道の因果に不落有落フラクウラクをわづらふことなかれ。
不昧フマイ本来の頭正尾正ズシンビシンなる、
明珠は面目なり、明珠は眼睛ガンゼイなり。
〔『正法眼蔵』私訳〕
大切にしないことがあろうか、
明珠はこのような美しい光が極まりないのである。
(愛せざらんや、明珠かくのごとくの彩光きはまりなきなり。)
その彩りと光の一筋一筋は、
ことごとくみなあらゆる世界の功徳である。
(彩々光々の片々條々は尽十方界の功徳なり。)
誰がこれを奪い取ることができようか。
(たれかこれを攙奪ザンダツせん。)
すべては明珠であるから、市場で塼を価値のないものとして投げ捨てる人は
いない。六道の因果に落ちれば沈淪し、落ちなければ解脱するなどと
思い煩ってはならないのである。
(行市アンシに塼カワラをなぐる人あらず、六道の因果に不落有落フラクウラクをわづらふことなかれ。)
〔因果に落ちても落ちなくてもみな明珠なのだ。〕
しかし、徹頭徹尾、因果の道理はくらまされない(造悪の者は堕ち修善の者はのぼる)、そこが明珠の面目であり、明珠の目玉なのである。
(不昧フマイ本来の頭正尾正ズシンビシンなる、明珠は面目なり、明珠は眼睛ガンゼイなり。)
合掌
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